<ここからは「男はつらいよ」から車 寅次郎でお読み下さい>






お。労働者諸君!相変わらず馬鹿か?



ハハハ!そうかそうか。


そりゃ結構。



ケッコー毛だらけ猫灰だらけ、お尻の周りはクソだらけってねぇ(笑)




…いやぁね?

俺はどっちでも良かったんだけどねぇ?東京は葛飾柴又に車寅次郎ってゆう四角い顔の奴の記念館があるらしくてね?


それがもう、サイコロみたく四角い顔の奴で笑っちゃうんだよな(笑)



でだ、なんだか新しい催し物が増えたって騒いでるもんだから、まぁ、しょうがねぇなぁ〜っ…てな感じでな?風の向くまま気の向くままにブラっと行ってみたわけよ。うん。




でもほら、俺は、学が無いから。


博物館とか記念館みたいな所はど〜も苦手でね。


こう、背中が痒くなっちゃう(笑)



だからまずは江戸川に行ってみたわけよ。



ビックリしたねぇ俺は。



立派なお車さん達がズラーと並んでてな、労働者諸君が玉投げしてる場所よりもお車さんが止まってる広さの方が広いんだよ。



同じ車でもわたくしとは扱いが大違い(笑)



いや、でも江戸川はやっぱりいいねぇ。


お約束のオープニングだからね。


ほら、今にも演者さん達の名前がドーンって出てきそうでさ。



俺ったら、間違えてその文字を手でつかもうとしちゃったりして(笑)。



さくら「あははは、やだぁお兄ちゃん、ホントにそんな事してたの?笑」



博「あははは、相変わらずだなぁ兄さんは」



おいちゃん「おまえ最近流行りの飛び出す映像ってやらに影響されすぎたんじゃないのか?」



寅「お。なんだい、おいちゃんその飛び出すなんちゃらってのは?俺はその「なんちゃら」に影響されて16の時に家を飛び出したって、そう言いてえのか?」



博「違うんですよ、兄さん」



さくら「で?お兄ちゃん、その寅さん記念館には結局行ったの?」



おぉ。そうだったそうだった(笑)。



でな?入ってみたらこれが角は一流デパート赤木屋黒木屋白木屋さんで紅白粉つけたお姐ちゃんに下さい頂戴で頂きますと五百が六百下らない品物がズラリと並んでて…いや、あれは紅白粉つけたお姐ちゃんはいらないか…。


あら?つい、いつもの商売癖が出ちゃったよ(笑)



おいちゃん「ハァ…おまえは本当馬鹿だねぇ…」



寅「…」




博「で?兄さん。中には何があったんです?」



ゴホン。



…でだ、俺みたいな学の無い人間でも入れさせてくれる優しい記念館だ。


見に来る人達はみんな貧乏人の集まりなわけだよ。



みんな硝子越しに物欲しそうにヨダレ垂らして見てるだけなんだから。



さくら「お兄ちゃん、記念館ってそうゆう所なのよ?」



そんな建物の中にまた家があってな!


ビックリしたね〜俺は。


家の中に家があるんだよ!


あれは最初間違えて大きく作りすぎたから中にまた作ったんだろうな。きっと。


でだ。もっとビックリしたのが、その中にある家がこのケチな団子屋[くるまや]にそっくりじゃねぇか!


笑っちゃったね〜俺は(笑)




そしたらその[偽くるまや]にどうやら入りたそうに玄関でウロチョロしてる青年がいてな。


それが…どこかで見たような風景でな、思い出せないから旅先でもらったバカチョンカメラで写真に撮っておいたのよ。


それがこれなんだがな?…さくら、どこかで見た事ないか?


さくら・博・おいちゃん「…」



むさ苦しいヒゲと太いモミアゲの青年でな。


そいつは俺と同じ雪駄をはいていたからなのか、馬があってな。意気投合してそれから一緒に見て回ったってわけよ!



ほら。このモミアゲ青年がくつろいでる場所もこことソックリだろ?



おばちゃん「あら。本当。不思議ねぇ」


そしたら青年は新しい催し物の人形劇みたいなのを見て泣いてたよ。



さくら「あら?どうして?」



寅次郎「ったく…何もわかっちゃい無いんだから。
いいかい?君たちみたいに朝起きて、ご飯があり、みんながいて、『おはよう』『行ってらっしゃい』と言ってくれるのが当たり前じゃない一人ぼっちの可哀想な青年達がこの日本にはたくさんいるんだよ?きっと…そうゆう…なんだ。普通に…挨拶をだな。挨拶を…。…朝の始まりは挨拶から…じゃなくて…」


博「ですから兄さんの言いたい事は、そうゆう些細な当たり前の日常にこそ幸せがある…って言うのかな。人は一人じゃ生きていけない。そう言いたいんですよね?」



寅次郎「そうよ!その通りよ!いや、しかしその青年。泣いてたと思ったら興奮したり笑顔になったりと変わった奴だったなぁ。」



おばちゃん「変わった子だねぇ。何かつらい事でもあったのかねぇ?」



寅次郎「だから、なんかあったんなら東京は葛飾柴又に[くるまや]と言うケチな団子屋があるからそこを訪ねるといい…そう言ってあげたよ。だからこの青年が来た時は宜しく頼むぜ?」



おばちゃん「もちろんだよ、ね?さくらちゃん?」




さくら「えぇ。そうね」




博「あれ?そのもう1つの写真はなんですか?」



寅次郎「え?どれ?」



博「それですよ、それ。兄さんの袖の中に」




寅次郎「え?どこ?」



おばちゃん「あら。落ちた」



さくら「これ?」




寅次郎「あ!チョッと待った!」



博「あれ?!この青年の後ろに写ってるの…リリーさんじゃないですか?(浅丘ルリ子)あ!この人は大阪の芸者さんの確か…フミさんだ!(松坂慶子)」


寅次郎「…」




さくら「あ!この下の人は前にお兄ちゃんに恋文を送った、ほら、陶芸の加納作次郎さんの、かがりさんじゃない?(いしだあゆみ)あら?奈々子もいる!(木の実ナナ)」


おばちゃん「あ〜、さくらの同級生の子だね」



おいちゃん「寅、おまえなんでこんな写真を隠してたんだ?」



(寅次郎鞄を持ち出ていこうとする)



さくら「お兄ちゃん!どこ行くの!?」


博「兄さん!」



寅次郎「さくら、止めるな」



さくら「何も昔好きだった人達の写真を隠して持ってたっていいじゃない」


おばちゃん「そうだよ?寅」



寅次郎「しょせん俺は恋に破れた未練たらしい旅烏よ…」


さくら「もうちょっとゆっくりしていってもいいじゃない。お兄ちゃんの晩ご飯もあるのよ?」



寅次郎「あのサンダル青年が駅で待ってるのよ」


さくら「ならそのサンダルさんも一緒に、ね?」



寅次郎「あいつも俺も同じ旅烏よ。さくら、達者でな。

お。風が出てきやがったな(襟を直し出ていく)。」



さくら「お兄ちゃーん」





「男はつらいよ〜寅次郎よ永遠に編」完